勤務先に有名な保険会社の営業マンが来て

(*´∀`*)「今度この地区を担当させていただくことになりました○○と申します」


とのこと。
それは別に良いのですが(他の会社の人間の担当地区など知ったこっちゃないから)、急に書類を取り出して


(*´∀`*)「自分はサッカー少年でした。ここに署名いただけませんか?たったそれだけで日本のサッカーチームにボールが寄付されるんですよ!お金は掛かりません、名前書くだけなのでお願いできませんか!」


と言ってきたのです。


(*´∀`*)「ね?お願いします」
( ≧∀≦)「なんで名前書くとサッカーボールになるの?」
(*´∀`*)「ええと、説明すると結構複雑なのでー、とりあえず名前を!」
( ≧∀≦)「おことわりだよー」
(*´∀`*)「‥‥え?」


せっかく大手保険会社の名刺を出したのにも関わらず、その信用を自分から「胡散臭さ」に変えてしまったことに気付かないようです。
しかも一般的に複雑と言われる保険商品。その営業マンともあろうものが、署名がサッカーボールになるという仕組みの説明すら出来ないのですから、保険自体の説明すらろくに出来ないのは簡単に想像出来ます。


仮にこの大手保険会社の営業部門の責任者が、若い社員に対し、このようなアプローチでの営業を推奨しているのだとしたら、会社のイメージを貶める行為だとして即刻やめさせるべきです。


可哀想ですが、三流以下の営業マンと話す時間はありません。
ライバルとの競争に勝ち、生き延びることは並大抵ではない苦労があるのだとは思いますが、そのようなズレた視点では今日を生き延びることすら難しいでしょう。




寅さん商法


映画「男はつらいよ」で有名な寅さん。
寅さんの仕事は街頭に立ち、道行く人に向かい


( ・∀・)「さあさあ皆さん!」


と呼び掛け、足を止めた方に対し商品を売る、という露店商のようなスタイルです。
基本的に道行く人々は目的があって外出している場合が多いので、露店商の話に耳を傾けたりしないものです。
ですが、寅さんの場合は何故か商売として成立してしまいます。それは何故かと言えば


話がクッソ面白いから


です。
今は絶滅したようですが、昔はまだ寅さんのような方が大きな荷物を片手に街頭に立って商売していたりしました。


( TДT)「どうかこの私の話を聞いて下さい。実は私はボールペン工場で働くしがない工員でございました。しかし先日、その工場が火事で丸焼け。私は仕事を失ったわけでございます」


ここで、何となく足を止めた紳士が、こう言葉を掛けます。


( ・ω・)「それは災難だったね、可哀想に。まあまだ若いんだから、他の働き口を見つけることだね」
( TДT)「はい、そう思ったのですが、工場の隣の寮も一緒に燃えてしまい、私の洋服や荷物は全て灰に!」
( ・ω・)「そいつは気の毒だ、でも少額でも退職金くらいは出たんだろう?」
( TДT)「出ましたが、社長も大変でして、現金のかわりに、この焼け残ったボールペンで現物支給となったのでございます」


男がカバンを開けると、そこには灰をかぶったボールペンが。


( ・ω・)「ということは君、このボールペンが売れなければ無一文で次の仕事も探せないのか?」
( TДT)「その通りでございます」
( ・ω・)「よし、こいつは人助けだ。そのボールペン、10本買おう!」
( TДT)「おおっ捨てる神あれば拾う神あり!あなたは私の仏様です!」


いつの間にか二人のやり取りを遠巻きに聞いていた何人かの人々が集まってきます。


(  ̄ー ̄)「ワシも10本買おう」
( ・∇・)「アタシも買うわ」


いつの間にか人だかりが出来てボールペンは完売。めでたしめでたし。






気付いた方は居られるでしょうが、ボールペン工場の工員の男と、最初に声を掛けた紳士はグルですw
工場が火事にあったのも嘘。


ヽ(・ω・)ノ「うそぴょん」


詐欺で訴えられそうですが、実際そんな話は聞きませんでした。
何故だと思いますか?


それは「嘘だと分かった上で買ってるから」なのです。





買って行った人々の心理


ボールペンに灰まで付けて、嘘を演出した売り手。
冒頭から紳士の登場、そして周囲を巻き込んた感動のエンディング。
ここには完成された「物語」がありました。


ボールペンを買って行ったお客さんはこう思ったはずです。


(*´∀`*)「もし万一彼の話が本当だったら人助けになって良かった。嘘なら火事は無かったことになるし、それはそれで良かったじゃないか。話はなかなか面白かったし、その面白さに代金を払っただけだ。しかも手もとにボールペンは残ったし誰も損はしていないんだから」


これ、売り手だけでなく買い手も見事だと思います。
こうした「偽物の皮を被った本物」にお金を払える姿勢を「粋(いき)」と呼びます。


この話はこのあたりで終わりにします。







お客様相手に何かを売る商売をしている方は、これから書くことを心に留めておいて欲しいと思います。
営業マンでもショップ店員でも同じです。


商売とは、売り手と買い手がお互いを認め合った上で行う信用取引です
この商品には○○円の価値がある、と両者が共有した上で、買い手は等価値の金銭によって所有権を譲り受けるのです。

そこには「買ってやった」または「売ってやる」という気持ちは存在しません。
上下の無い対等の信頼関係が根底にあるのです。


世の中には沢山の商品が溢れていて、買い手側は売り手を選ぶ時代です。
今まで何をしていた会社か、どれだけ業界大手かなどは買い手からすれば、どうでも良いことだと気付かなければなりません。
買い手は今しか見ていません。
今そこに居る売り手が信用に値するのか?
まずはその一点から始まります。


そこへ目を向けず、価格やその他の要素ばかりを重視する商売のスタイルには反吐が出ます。


買い手の「粋」を引き出してくれる売り手こそ、現代を生き延びるに相応しい。
そうは思いませんか?






※あくまでも私見に基づいた記事です。気分を害された方にはお詫び申し上げます。