こうしたタイムリーな記事は今のうちにアップした方が良いと思い差し込んでみました。


同僚に聞いて知りましたが、テレビでハンドメイド作品の販売を行う人を特集したようで、その影響なのか


ハンドメイド作品を販売する人は安い原価で作ったものを高く売って得している


という声が広まったのだそうです。
そのおかげで商品の価格を下げて欲しいという、所謂『値下げ』交渉が増え、作家さんから怒りの声が上がっているとのこと。
あちこちのクリエイターがSNS等で反論を展開しています。





値下げ文化



今でも多少は残っていますが、お店に行ったらとりあえず「安くならない?」という人。
そして「おまけしますよ」という店員。
これをセットとした商売が幅を効かせている地域にあるのが値下げ文化です。


こうした文化の元では『値下げしてもらわないと損』なので、子供からお年寄りまで値下げを要求してきます。


ただし、日本にはこうした値下げ交渉を『卑しいもの』とする考え方もあります。


個人商店の代わりにスーパーなどの大型量販店に買い物の場が移ると、人件費の効率化の問題から一対一での接客を少なくする『セルフ型』が一般的になりました。
価格は一律下げられ(値下げ交渉後の価格)、そのかわり一切値下げには応じないスタイルが浸透しました。
そしてこうしたスーパー等でも値下げ交渉をしようとする人には『モラルの低い人』というレッテルが貼られるようになったのです。







原価とは何か?



今回の話題の中で出てくる『原価』というワード。
流通業界の基本ですが、これは仕入れ価格に相当します。ある商店を販売可能な状態に仕上げる為の価格ということですので原材料費とは違います


具体例を挙げてみます。




例 革のロングウォレット(メーカー品)

本体材料費:400円
抜き型の製作費の償却費用の一部:300円
工場側の人件費・経費(機械を動かす電気代など含む)の割り当て:200円
パッケージ代:50円

合計950円


この850円が原価となります。
※非常に適当に書いていますので実際と異なります



ハンドメイドの場合も見てみましょう。



例 革のロングウォレット(ハンドメイド)

本体材料費:800円
使う工具や機械の購入&維持費用割り当て:1000円
パッケージ代:100円

合計1900円


ハンドメイドの場合はこの1900円が原価です。
多くの場合ハンドメイド(手作り)は大量生産が不可能ですので、一個当たりの原材料は安く抑えることが出来ません。その他の部材も同様です。
ほぼ同じレベルのものを作ろうとした場合、ハンドメイドの方が原価は必ず高くなると言って良いでしょう。




ちょっと趣は異なりますが、変わり種も挙げてみましょう。




例 魚の骨で作られた置物(ハンドメイド)

本体材料費:15円(接着剤の値段)
使う工具の代金の割り当て:0円(手のみ)
パッケージ代:100円

合計115円




例 流木から彫られた仁王像(ハンドメイド)

本体材料費:0円(拾った)
使う工具の代金の割り当て:1500円(ノミ、彫刻刀など)
パッケージ代:0円(むき出し)

合計1500円



イメージいただけましたでしょうか。








販売価格の設定



原価に利益をプラスしたものが販売価格です。
販売に関してのあらゆる経費はこの利益で賄います。
ここは販売業者や個人によって大きな差が生まれるところでもあります。



(*゚∀゚)「よし、ここでどーんと上乗せして利益を取るぞ!」



そうはいきません。


・販売価格が上がる→買う人が少ない
・販売価格が下がる→買う人が増える



というのは常識です。
似た商品があちこちにある場合は価格を抑えなければ売れません。
一個も売れなければ、利益率がいくら高くても利益はゼロです








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さて、ここまで読んで下さった方は


ハンドメイド作品を販売する人は安い原価で作ったものを高く売って得している


とお考えでしょうか?
一番の誤解は『原価』と『原材料費』を混同していることから生まれているであろうことはお分かりいただけたと思っています。


この問題はここで解決です。








ですが多くの作家さんの怒りを生んでいるのは、実はこの『ハンドメイド~得している』という的外れな発言ではありません。
怒りの原因の本質となっているのは


『作り手の技術やセンス、アイデアは原価に含まれないのか!?』


というものです。








ピカソの絵の逸話



有名な話ですがあの天才画家であるピカソに対してファンが



(。・ω・)ノ゙「この紙に絵を描いてください」



と無茶なお願いをしたところピカソは30秒程で一枚の絵を描き上げました。
そしてこう言います。



(=゚ω゚)「この絵の価格は100万ドルです」



女性は驚き言います。



(。・ω・)「え?だってたった30秒しか掛かってないじゃないの!」



それに対してピカソが笑顔で言ったことが



(=゚ω゚)「30年と30秒ですよ」





スカっとする話ですね。
ピカソはユーモアセンスも持ち合わせていたようです。
個人的にはアタクシはこの絵に100万ドル以上の価値があるように思えます。
彼の芸術家としての魂が30秒で一枚の絵となって形を成したのです。


この話の意味が理解出来ない方には恐らく何をどう説明しても無駄です。








当然ながら技術やセンス、アイデアも原価に含まれる



技術の習得に時間もお金も掛かることは言うまでもありません。
時は金也と申します。
習得技術のレベルと、その域に至るまでの歳月をお金に換算したものは原価として考えます
専門学校などに通った場合はその学費も原価と考えて良いでしょう。
自分の持つ技術が原価に含まれるかどうかがいまいち判断出来ないという方は、同じ材料と道具で他人がその作品を自分と同じクオリティで再現することが可能かどうか考えてみると良いでしょう。


センスやアイデアというものは、もっと複雑です。
コロンブスの卵のように、誰も思いつかない時には誰も出来ないけれど、一度誰かがアイデアを思いついてしまうと、真似をするのは簡単といったことは数多くあります。
エドワード・ヴァンヘイレンのライトハンド奏法(YouTubeで検索を)も最初はステージ上で後ろ向きになって弾き、客にどうやって弾いているのか隠していたそうです。
これはセンスとアイデアには鮮度があることを意味しています。
簡単に真似が出来るものは、方法が分かれば次々と真似されていくのが必然(例の奏法は既にメジャーとなりました。高校生でもマスターしている人が居ます)です。


なので鮮度が高いうちは原価として大いに換算すべきですが、それは長い時間は続きません
ですが、作家として光るセンスを発揮し、驚きのアイデアで納得させてくれるような方ならば、自分の生み出した既存のモノに固執せず、さらなる新しいものを生み出してくれることでしょう。









値切られては困る人々



ずっと作家さん側の立場で話を進めてきましたが、ここで少し視点を変えてみます。
自分の作品に対して『自信』のあるハンドメイド作家さんというのは、何も憶することなく堂々としていれば良く、仮に値下げを要求されたとしても、淡々とそれが出来ない旨を説明し、もし理解されなければ最悪の場合『ではあなたもこの条件で作ってみれば良いと思います』で済むのだと思います。


これで対処できないのだとすればそれは


たいした技術のセンスもアイデアも無く、安い原価で作ったものに常識外の販売価格を設定して売っているからでしょう。


もっと腕を磨いて出直ししてみてはいかがでしょう。
それこそ、自分の作品に『自信』が持てるくらいに。











まとめ



個人でも会社でも同じことが言えます。


『商売とは通貨という共通の価値観による信用取引だ』


ということ。


この商品には〇円払うだけの価値がある、という風に販売側が提示し、それが欲しいお客さんはその商品と等価値の通貨を支払うことで『お金と商品の等価交換』を行うわけです。
お互いが信頼関係になって初めて成り立つことなんだ、ということを頭に置いておく必要があるのです。


等価交換である以上、お互いの立場は対等です。
もちろん「売ってやる」or「買ってやる」という態度が間違っていることは言うまでもありません。


スーパーなどの量販店の場合、お客さんの側から見れば、この商品の価値は何をもって信用すれば良いのか?
それはそのお店の看板です。
今まで掲げて商売をしてきた年月、その他もろもろを考慮して『このお店は信用出来る』と感じるのです。


お店側からすれば、多くの方がきちんとレジを通ってお金を払ってくれている、という事実や、基本的にこの国では支払いに使ったお金が偽物だったというケースはほぼありませんので、そうした意味では信用に足る取引相手としてお客さんを見ています。


ではハンドメイド作家さんの個人商店はどうでしょうか?


実はお店もお客さんもお互いを信用する為の材料に著しく欠けているのです。


だからこそ多くの作家さんはSNSを駆使します。
そこで自身が信用に足る人間であることを示す必要があるのです。
そうまでして構築したいのがお客さんとの信頼関係なのですから。


そんな時



( ̄∠  ̄ )「これ、ちょっと高過ぎませんか?安くしてもらえませんか?」



と言われたらどう思います?
いや、訊くまでもありません。



(*゚∀゚)「(・・・・この人とは信頼関係を築けない)」



と思う筈です。
信頼関係が築けないのに、商売が成り立つ筈が無いのです。
商売が成り立たないのに、値下げも何もありません。


値下げを要求してくる人には共通点があると思っています。
それは値下げ交渉の文面に現れます。


「この価格じゃ売れないから親切に教えてあげている
「値段を下げたら買ってあげるのに」


分かりますか?
全て上から目線。つまり作家を下に見ていることの証です。


繰り返しますが商売は対等の信用取引です。


長くなりましたが記事のタイトルとなった『ハンドメイド作品を値切られたらどうするか』ということに対する対策です。




(*゚∀゚)「冷やかしなら帰れっ!!二度と来るなっ!!!!!!!」




と言いましょう。
以上です。







※記事の内容について一部の方の気分を害する可能性がありましたこと、ここでお詫び致します。申し訳ありません。ハンドメイドの分野以外での値切り交渉については、お店とお客のコミュニケーションの意味合いも含むということをここで明記しておくと共に、交渉自体を否定するものでは無いことをご理解いただければと思います。誤解無きよう宜しくお願いいたします。